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【VOL.2】「怒り」をめぐるストーリー、そしてそこから始まった人生の転換について

 

〜これはわたしが昨年体験した、「怒り」をめぐるストーリー、そしてそこから始まった人生の転換についてのお話です。前編はこちらからどうぞ〜

 

こんなワークショップに、あなたは参加したことがあるだろうか?

 

たとえば、あなたがいま抱えている課題、悩んでいることをその場でシェアする。

 

その後、ファシリテーターや講師のリードで、あなたの課題や悩みに関わる登場人物ー職場での課題なら上司や同僚、家庭での課題ならパートナーや親、子どもなどーを思い出させるようなひとを、そのワークショップに参加しているひとのなかから選んでいくのだ。

 

そして、そのひとを前に、自分のなかから湧き出たことばを伝える。それはもちろん、実際のあなたの課題や悩みに関わるひとに向けて言いたいことだ。普段は言わないように我慢していたり、我慢していることにすら気づかなかったりするので、ときにはファシリテーターが「こんなふうに言ってみてください」とセリフを提示する。あなたはそのセリフを繰り返すだけでもいい。

 

すると、何が起こるかー。

 

☆☆☆☆

 

真夏の陽射しがめいっぱい降り注ぐリビングに、わたしは裸足で立っていた。夢うつつのこの状態でワークをしたほうがいい、頭が覚醒してきてしまえば、きっと望むような結果は得られないだろう。そう思ったわたしは、目の前に自分の家族がいる情景をイメージした。

 

ワークショップではないから、登場人物に似たひとを会場のなかから探すわけにはいかない。あくまでイメージのなかに立つわたしと、目の前に立つ家族ー。

 

ーさぁ、マインドが目を覚まさないうちに。みんなに言いたいことは何?

 

泣きながら昼寝から目が覚めたわたしだったが、そう自分に問いかけた次の瞬間、自分の口から出たくぐもった叫びを聞いてまた堰をきったように涙があふれた。

 

「・・・・・・おまえらのそういうところが許せない!」

 

そのことばを発した自分の声を耳にしたら、もう止まらなかった。子どものようにごうごう泣きながら、わたしは体を折り曲げて泣いた。顏をくしゃくしゃにして。ゆるせない、ゆるせないと絞り出すように言いながら。

 

けれど頭の一部はやはりとても冷静で、泣いている自分にこう言い聞かせている。何が許せないの?言ってしまいなさい、ぜんぶ言ってしまいなさいー。

 

「・・・おまえらのその田舎もんの考え方がゆるせない」

 

「狭い世界しか知らないくせに、自分たちの考えが正しいって信じて疑わない、その考え方がゆるせない」
「その狭い視野でひとをジャッジする、おまえらがゆるせない」

 

イメージのなかの家族に罵詈雑言浴びせたわたしは座り込んでわーわー泣いた。わーわー泣いて、泣いて、泣きまくったら・・・信じられないくらいにすっきりしたのだ。子どもの頃、恥も外聞もなく全力で泣いて、泣ききってけろっとした、あの頃の感覚と同じような。もしくはもっと大人仕様に言うなら、五感と感性すべて解き放ち、「過去」も「未来」もどこかに消えてしまう特別なセックスをしたあとのような。

 

ー感情を解放すると気持ちいいって、こういうことか。

 

リビングの壁にもたれながら、しばらく惚けたように座っていたわたしは、ずっと知りたくてモヤモヤしていたことをようやく探りあてたような気がしていた。

 

ーわたし、家族に対してあんなふうに怒ってたんだ。

 

あらゆる問題の根元に家族あり、というのはまぁ、あるあるな話だ。半年に1度、泣きながら怒る夢を見ていたわたしは、家族に何か言いたいことがあるんだろうなという自覚はあった。

 

ーでも、そうか、あんなことが言いたかったんだ。

 

何にそんなに怒っているのか自分でもまるで気づいていなかったけれど、今日のあのへんてこな夢でわかった。わたしは自分の家族の一方的なものの見方や狭い視野、他の価値観を否定することで成り立つ正義を信じて疑わないこと、そんな諸々が嫌で嫌で仕方なかったのだ。そして嫌で嫌で仕方ないなら、その都度言えばよかったのに、衝突が怖くてスルーしてきた。父が怒ったり、母が泣いたり、姉や祖母がヒステリックに叫んだり、そんな感情吹き荒れる家族のなかにいるのが怖くて仕方なかったから。末っ子で何もわからないと思われつづけてきたけれど、そうではないのだ。頭の上を飛び交う嵐の下で、わたしはずっと寝たふりをしてきた。ずっと飲み込み続けたそのことばひとつひとつはとても小さなもので、けれど溜まりつづけたそれはもう持ちきれないほどに大きくなっていたのだろう。

 

ーあーあ、なんかもうどうでもよくなっちゃった。

 

それまでなぜだろう、どうしてだろうと思ってきたことがわかって、何だかすべてがどうでもよくなってしまった。一方で確かにとても大切に思っている家族のことを、一方では「おまえら」呼ばわりするほど憎んでもいることに心底仰天した。うわー、わたし、とんでもない奴だ。とんでもない奴だけど、うん、すっきりした。

 

べつに実際、家族に罵詈雑言浴びせたわけじゃなし。すっきりしたことだし、よかったよかった。今度からは少しずつでいいから、家族に自分のいいたいことを言えるようにしていこう。

 

そんなことを思っていた。

 

けれど、思っていた、では終わらない夏だった。

 

◆つづく◆


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