ピンときたら、動く。それが、その先、思いもよらなかった展開が起こるときの呼び水だ。奇跡のメダイユ教会で出逢ったシスターが「ルルド」と「モン・サン=ミシェル」のことを口に出されたとき、これはまた次に行く場所を指し示されたのかなと感じた。
そう感じたのにも、じつは理由があった。以前、とあるひとから「あなたはルルドとモン・サン=ミシェルに縁があるから、1度行かれてみるといいですよ」と言われたことがあったのだ。これはまた、不思議系のお話だけど。だからフランスに来ると決めてから、その2つの地名を気にはしていたのだが…。
「遠いんだよなーー!!」
ホテルのベッドに突っ伏し枕にむかってモゴモゴと叫ぶ。そう、遠いのだ、ルルドもモン・サン=ミシェルも。
モン・サン=ミシェルはパリを訪れた観光客が足を伸ばすスポットとしては、ヴェルサイユ宮殿なみにメジャーな場所だ。ただし、パリから約360km、自力で行くとなると電車とバスを乗り継いで約4時間かかるという。バスでいくツアーに申し込んだほうが利便がいい、途中、有名なシャルトルの大聖堂も見れるし…というところまでは調べていたのだが、どうにも触手が動かない。
ひとりでフランスまで来ておいてこんなことをいうのも説得力にかける気がするけれど、もともとわたしは「移動時間4時間」という説明を受けただけで興味が半分以上減ってしまうような「なんちゃって旅びと」なのだ。夜行バスを乗り継いだり、バックパックを背負って10何時間も列車にゆられて…なんてハードコアな旅はとてもじゃないがやる気にもならない。パリが思った以上に楽しかったこともあり、わざわざ苦手なバスに何時間もゆられて行って1日か2日か費やすのはなー、どうしようかなー、やっぱり今回はやめておこうかなー…と思っていた矢先のことだったのだ。シスターの口からこの2つの地名が飛び出したのは。
―うーん、ルルドねぇ…。スペイン国境近くか。もうこうなったらスペインも行っちゃう?マドリードにナタリーもいるしなぁ。
―でもでも、今回はやっぱり南仏からイタリアに抜ける旅がしたいし。そこから大幅にはずれるルルドはやっぱり今回はなしかなぁ。で、やっぱりモン・サン=ミシェルは行っとこうかなぁ。
「みかちさん、メダイユ教会もルルドもモン・サン=ミシェルも、奇跡が起きた場所ですね。それを巡るっていうのも、今回の旅の目的になるのかも」。チホコさんのことばを思い出す。
当初、4月7日には発つつもりだったパリ滞在だが、ホテルに3泊の延長をお願いして、それを10日までに伸ばしていた。パリをもう少し満喫したかったのだ。
―また伸ばしちゃう?え〜、、
―それとも明日モン・サン=ミシェルに行く?でも明日はパリでまだ行きたいところがあるし…。
ベッドのうえでゴロンゴロン転がりつつ、悩み続ける。
何せ、このあとは南仏に行くとだけ決めていたけれど、この時点でまだ具体的にどの街に行くかも決めていなかったのだ(「TGVは早く予約しないと満席になるよ」「人気路線は高くなるよ」と、出発前にさんざんアドバイスをくれたヒロシさんには口が裂けても言えないこのていたらく。ごめんなさい)。
「この旅では直感と感性にしたがう」。そう決めたら、1週間先の予定はおろか3日先の予定すら立てられない人間になっていた。だって、ひらめきはいつもたった1歩先しか見せてくれないのだ。2歩めは1歩踏み出してはじめて見える。なのに3日先のこと?わかるわけがなかった。
その日の夜、ホテルのすぐ隣のビストロでヒューガルデンを飲みながら、結局、わたしはこう判断した。
「こんなに悩むってことは、時期じゃないってことだ」。





