―“どうして?”
―“どうして忘れていたのですか?”
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神さまのそばにいたい」
万感胸に迫る、とはこういうことをいうのだろうか。よろこび一色でもない、哀しみ一色でももちろんない、色とりどりの感情の波が胸の奥から湧いてきて喉へ向かい、頭のてっぺんから抜けていく。見上げた先はまだ明るいアルルの空だ。風が頬をなでる。全身の細胞が、魂が、100年の眠りから覚めてはじめてときを刻みはじめたかのようだった。
「・・・・・おそばにいさせてください・・・・・・・・」
多少なりとも文章を書く人間であれば、身のうちに生まれることばがどこからやってきたかはわかるものだ。そして、これはわたしのなかから湧いてきたことばではなかった。集合無意識につながった?このサン・トロフィーム教会で何世紀にも渡って積み重なってきた空気のなかの何かにつながった?それとも自分の前世のようなものを覚えている細胞が反応した?わからない。けれど、これが自分のことばではないことだけはわかった。どこからかやってきたことばがわたしを通り抜けたのだ。どうして忘れていたんですか、神さまのそばにいたい、と。
―そばにいさせて、って…今生では思ったことすらないよ。
冷静にながめる自分と、いまにも両手を広げて踊り出したい自分がいる。そうだよ、どうして?どうして忘れていたの?もうきっと忘れないよ―。
何時間でもいい、ずっとここにいたいと願った。





